3月3日の節句、ここ北相木村では、家難祓(カナンバレ)という行事が行われます。
「家の難事・世の中の災い事・人のけがれやわずらい」を、人形が身代わりになって祓い流してくれる、という古くからの信仰です。
かつては(少なくとも戦前のある時期までは)、各地区ごとの小学生の女の子が行なっていたようです。子供たちは、古くなった雛人形やお餅などを持って川原に集まり、むしろや蚕篭(かいこかご)などで簡単な小屋をつくり、そこに人形を飾りました。そして、お汁粉などを食べ、歌い楽しんだ後、雛人形で体をなで、それを川に流していたそうです。
戦前までは、このような行事が各集落で盛んに行なわれていたようですが、昭和50年代になり、村小学校の行事として行われるようになりました。現在は村老人クラブの方々が、サンダワラ造りを指導し、子供たちは役場前の川原でお汁粉をすすり、自分達で作った雛人形を、祓いごとを書いた紙とともに川に流します。
人形にいろいろなものを付託して流すのは、中国道教的思想の影響で8世紀頃からあるといいます。また、各節句の日に浜辺や川原などで遊ぶ行事は全国的にあったらしく、これは「イソアソビ」「ヤマアソビ」などと呼ばれていました。
小さな山村に残された、過去の記録と言えそうです。
なお、学芸員の仕事は、雛人形の回収です。現代的ですね。